令和7年度 税制改正大綱
令和7年度 税制改正大綱 -法人会の税制改正提言-
~中小企業に対する軽減税率は維持!税と社会保障の問題への対応が始まる!~
政府は、令和6年12月27日に令和7年度税制改正大綱を閣議決定しました。
法人会が提言していた中小企業に対する軽減税率・投資促進税制などは2年間延長され、税と社会保障制度に対するあり方をめぐって個人所得課税では、基礎控除・給与所得控除が引き上げられることで、「年収の壁」への対応が始まりました。主な内容をお知らせします。
法人税関係
⑴中小企業者等の軽減税率の延長
中小企業者等の法人税の軽減税率の特例は、次の見直しを行った上、適用期限が2年延長され、令和9年3月31日までに開始する事業年度となります。①所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率は15%から17%に引き上げられます。
②適用対象法人の範囲から通算法人は除外されます。
⑵中小企業投資促進税制の延長
中小企業投資促進税制は、適用期限が2年延長され、令和9年3月31日までに開始する事業年度までとなります。
⑶中小企業経営強化税制の延長
中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度は、一定の措置を講じた上、その適用期限が2年延長され令和9年3月31日までとなります。
⑷企業版ふるさと納税制度の延長
認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除制度は、適用期限が3年延長され、令和10年3月31日までの特定寄附金に適用されます。
⑸リース取引についての取扱い
①オペレーティング・リース取引により資産の賃借を行った場合、その取引の契約に基づきその法人が支払う金額は、その金額のうち債務の確定した部分は、その確定した日の属する事業年度に損金算入します。会計基準とは異なる取扱いであるため、別表による調整が必要になります。
②リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例は、廃止されます。(適用時期については大綱上明記されていませんが一定の調整期間を設けると思われます。)
③令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引のリース資産の減価償却は、リース期間定額法の計算で残価保証額を控除しないこととし、リース期間経過時点に1円に達するまで償却が可能となります。
⑹防衛特別法人税の創設
税額控除適用前の法人税額から基礎控除500万円を控除した額の4%を、防衛特別法人税として課税する仕組みが創設されます。令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
所得税・住民税関係
⑴基礎控除の引上げ
基礎控除は、合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額を10万円引き上げ、58万円になります。所得に応じた基礎控除は次のとおりです。
本人の合計所得金額 | 基礎控除 |
---|---|
2,350万円以下 | 58万円 |
2,350万円超 2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 |
⑵給与所得控除
給与所得控除は、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられます。
⑶特定親族特別控除
居住者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等で控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合に、その居住者のその年分の総所得金額等から次のとおりの控除額が控除されます。
親族等の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
58万円超 85万円以下 | 63万円 |
85万円超 90万円以下 | 61万円 |
90万円超 95万円以下 | 51万円 |
95万円超 100万円以下 | 41万円 |
100万円超 105万円以下 | 31万円 |
105万円超 110万円以下 | 21万円 |
110万円超 115万円以下 | 11万円 |
115万円超 120万円以下 | 6万円 |
120万円超 123万円以下 | 6万円 |
大学生等の子がアルバイトをしている場合、子の収入金額が103万円を超えることで、親の扶養親族から外れ、結果として子の収入金額の手取り額の増加より、親の税負担の増加が大きくなることを是正することを趣旨とします。
⑷同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件の緩和
同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得要件が48万円以下から58万円以下に引き上げられます。これは、基礎控除の金額と一致させる取扱いです。
⑸ひとり親の生計を一にする子の総所得金額要件の緩和
ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件が48万円以下から58万円以下に引き上げられます。
⑹勤労学生の合計所得金額要件の緩和
勤労学生の合計所得金額要件が75万円以下から85万円以下に引き上げられます。
⑺家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例の最低保障額の緩和
家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。いわゆる内職者に、給与所得控除と同額の控除を認める制度であるため、給与所得控除と一致させる趣旨です。
※前記の各改正は、令和7年分以後の所得税に適用されます。ただし、源泉徴収税額への影響は令和8年1月1日以後支払う給与等及び公的年金等について適用されます。
⑻個人住民税の改正
所得税の改正に合わせて個人住民税に、控除額等の見直しが行われます。令和8年度分以後の個人住民税について適用されます。
⑼生命保険料控除の見直し
新生命保険料に係る一般生命保険料控除について、居住者が年齢23歳未満の扶養親族を有する場合、令和8年分の一般生命保険料控除の最大控除額を現在の4万円から6万円に引き上げられます。ただし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は従来通り12万円となります。
⑽子育て世帯向け住宅ローン減税の改正
引き下げ予定であった借入限度額は、特例対象個人(夫婦どちらかが40歳未満あるいは19歳未満の子がいる)の場合、取得した省エネ性能に優れた長期優良住宅に令和7年の間に居住の用に供した場合でも、住宅借入金等の年末残高の限度額5,000万は維持されます。
⑾確定拠出年金制度等の改正に合わせた対応
①企業型確定拠出年金制度のマッチング拠出について、企業型年金加入者掛金の額は事業主掛金の額を超えることができないとする要件が廃止されます。また、拠出限度額は、確定給付企業年金制度に加入していない者は月額6.2万円、加入している者は月額6.2万円から確定給付企業年金ごとの掛金相当額を控除した額、に引き上げられます。
②個人型確定拠出年金制度は、60歳以上70歳未満で現行の個人型確定拠出年金に加入できない者のうち、個人型確定拠出年金の加入者・運用指図者であった者又は私的年金の資産を個人型確定拠出年金に移換できる者であって、老齢基礎年金及び個人型確定拠出年金の老齢給付金を受給していない者を新たに制度の対象とすることとし、その拠出限度額は月額6.2万円となります。拠出限度額については、第一号被保険者は月額7.5万円、企業年金加入者は月額6.2万円から確定給付企業年金ごとの掛金相当額及び企業型確定拠出年金の掛金額を控除した額、企業年金に未加入の者は月額6.2万円となります。
③国民年金基金の掛金額の上限は、月額7.5万円となります。
⑿受益者等が存しない信託に受益者等が存在することになった場合
受益者等の存しない信託である法人課税信託が、受益者等が存することで法人課税信託に該当しないこととなった場合、その法人課税信託が特定法人課税信託であるときは、その信託財産に属する特定株式は、特定株式をその該当しないこととなった時における価額により取得したものとみなして、その受益者等の各年分の各種所得の金額を計算するものとし、特定株式のその時の直前の帳簿価額に相当する金額は、受益者等のその取得した日の属する年分の各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しないこととなります。
⒀退職所得の源泉徴収票の提出義務
退職手当等の支払をする者は、退職手当等の支払を受ける全ての居住者に係る退職所得の源泉徴収票を税務署長に提出しなければならないこととなります。令和8年1月1日以後に提出すべき退職所得の源泉徴収票について適用されます。
相続税・贈与税関係
⑴結婚・子育て資金の一括贈与制度の期限の延長
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の適用期限が2年延長され、令和9年3月31日までとなります。
⑵事業承継税制の改正
事業承継税制では、非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の特例制度における役員就任要件が、「役員として贈与の日まで3年以上継続していること」から「贈与の直前に役員であること」に緩和されます。令和7年1月1日以後の贈与から適用されます。
資産税関係
中小企業等経営強化法に規定する先端設備等導入計画に基づき、中小事業者等が取得する生産性向上や賃上げに資する一定の機械・装置等に係る固定資産税の課税標準の特例措置は、次の見直しを行った上、その適用期限が2年延長されます。
①対象資産を雇用者給与等支給額の引上げの方針を位置づけた同計画に基づき取得する一定の機械・装置等に限定します。
②当該機械・装置等に係る課税標準は、次のとおりとします。
雇用者給与等支給額 | 軽減期間 | 課税標準額 |
---|---|---|
1.5%以上引上げ | 3年間 | 2分の1 |
3%以上引上げ | 5年間 | 4分の1 |
消費税関係
⑴輸出物品販売場における免税方式の見直し
①輸出物品販売場を経営する事業者が、免税購入対象者に対して免税対象物品を譲渡した場合、購入者が購入した日から90日以内に出港地の税関長による確認を受けたときは、その確認をした旨の情報を輸出物品販売場を経営する事業者において保存することを要件に、その免税対象物品の譲渡について、消費税が免除されます。
②免税購入対象者は、購入した免税対象物品について、出国時に旅券等を提示して税関長の確認を受け、その確認を受けた免税対象物品を国外に持ち出さなければならないこととされます。
③税関長は、輸出物品販売場を経営する事業者に対し、購入記録情報ごとに、国税庁の免税販売管理システムを通じて税関確認情報を提供するものとされます。
⑵免税対象物品の範囲の見直し
①消耗品について免税購入対象者の同一店舗一日当たりの購入上限額及び特殊包装を廃止するとともに、一般物品と消耗品の区分が廃止されます。
②免税販売の対象外とされている通常生活の用に供しないものの要件を廃止し、金地金等の不正の目的で購入されるおそれが高い物品は、免税販売の対象外とされる物品として個別に定める仕組みとなります。
⑶免税販売手続の見直し
①船舶観光上陸許可等により上陸する者の免税販売手続は、上陸許可書及び旅券の提示を求め、輸出物品販売場を経営する事業者は、旅券番号に基づき購入記録情報を提供するものとします。
②免税購入対象者が輸出物品販売場で運送契約を締結し、その場で物品を運送事業者へ引き渡す、いわゆる「直送」による免税販売方式は、輸出免税制度により消費税を免除されることになります。輸出物品販売場での販売は、購入者の不正が多く、輸出物品販売場の負担が大きくなっていました。今回の改正で輸出物品販売場の負担が相当軽減されることが見込まれます。
その他
⑴グローバル・ミニマム課税への対応
軽課税所得ルールへの対応及び国内ミニマム課税に対応するための法整備を行います。国際的な、税率の引下げ競争を防止する趣旨の改正です。
⑵ガソリン税の引下げ
ガソリンの暫定税率は廃止される見込みです。具体的な実施時期等については、今後協議される見込みです。報道等で大きく取り上げられていた部分ですが、生活に直結する減税となります。
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